円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
エリノアは、教えてもらった通り、
もと来た通路を戻って屋敷の裏庭に来た。

屋敷は思った以上に広い。

裏と言っても、一度に見渡せないのだ。

何も見えなかったときには、探すのも
一苦労だと思ったが、建物の陰になった
ところで、横たわった女性をアリスが
介抱しているのが見えた。

横になっているのは、ミーガンだろう。

ぐったりして具合が悪そうだった。


エリノアは、アリスのすぐ横に立った。

「こんなところに居たのね」

「エリノア様、申し訳ございません」
アリスがすまなそうに言う。

「そんなことより、ミーガンさんどうなの?」

「あまりよくないようです。侯爵夫人に
知らせなきゃいけないんですけど、
彼女が夫人に言うのを嫌がって……」

メイドと息子の客との不手際を
知ったら、侯爵夫人は、間違いなく
ミーガンを解雇するだろう。

エリノアは、大きく息を吸って尋ねる。

「ミーガン、お腹の子供はトーマスさん
の子供ね?」

「エリノア様……」
申し訳ありませんと言いたいのだろうか?

エリノアは、ミーガンのしたことに、
それほど腹を立てていなかった。

それよりも、本当に顔色が悪い。

具合が悪くなってすぐに、医者に診て
もらいに行けばいいのに。

仕事を失うと思うと、それもできない
のだ。

エリノアは、アリスの方を向いた。

「アリス、ジョンを呼んで。馬車を
こっちに回してもらうように言って。
それからトーマスさんにも事情を
知らせて」

「かしこまりました」

「エリノア様……」

「病院に行くわよ。このままにして
おくのはよくないわ」
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