円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
さて、どうしたものかと

ウィリアムは、椅子から立ち上がり、
何気なく窓辺に立った。

窓の外は、見事な伯爵家の庭が見える。

亡き父が、この庭を見ながらいつも
言っていた。

ウィリアムは、懐かしい思い出で
一杯になる。

『なあ。ウィリアム。伯爵家のやる事は、さっぱりわからんな。
やつらは、なんと屋敷をいきなり白く
塗りたくったぞ。お前はどう思う?』

『白い外観は目立ちますね』

『そうだろう?目立つのはよくない。
それにな、何でも、最近は、庭も自然に
見えるのが流行りだそうだ。

だから、突然、庭木を全部引っこ抜いて、わざわざほんの少しずらした場所に
植えるんだと。
根を張ってしっかり生きておる木を、
引っこ抜いてだぞ?まったくわからん』

と、父がこの場所に立って、不思議そう
に言っていたのを思い出した。


今でも、父が首をひねっていたことを
思い出した。

あれから、もう何年も経ってしまった。



引っこ抜いた木はどうやら、枯れること
なく無事に根付いたようだった。

また、伯爵家の気まぐれで、また、
別の場所に植え直されなければ
いいのだが。

ウィリアムは、そんなことを考えていた。

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