円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
庭の外れに厩舎が見えた。
庭に比べて、厩舎につながれてる馬に
ついては、お粗末なもので、
庭木の半分でも馬のことを考えてやれば
いいのにと彼は思っていた。
この家は、馬が生きているということを、考えていないようだった。
乗馬も好まない。
もちろん狩りなどは、動物虐待だと罵る
始末、侯爵家とまるで逆の家風だった。
ここの家のものは、馬車でばかり
移動しているから、それを引っ張る馬
のことなどどうでもいいのであろう。
と思って見ているうちに、ウィリアムの
目が一台の馬車に釘付けになった。
御者が馬を引っ張って行くのが見えた。
御者の姿よりも、栗毛の馬の方が彼の目にとまった。
馬を連れている御者がジョンだと分かると、ウィリアムは、落ち着いては
いられなくなった。
「エリノアは出かけるのか?」
ウィリアムは、考えるよりもまず行動に
出ていた。
トーマスが出て行ったことと、
何か関係があるのだろうか?