円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
メアリーは、舞踏会の衣装を胸に当てながら、妹のエリノアに声をかけた。
「ねえ、エリノア?
どっちの服がいい?やっぱり、こっちかな」
メアリーは、さっき試着した別のドレスを手にする。
どれも素敵。
この中から数着、選ばなければならない。
本当に迷ってしまう。
ドレスは、最高級とはいかないまでも、
外国製の生地で丁寧に仕立てた。
毎晩のように開かれる晩餐会のために、
夜会のドレスだけでも何着も用意される。
二人分の衣装となると、
ものすごい数になるのだ。
だから、衣装のすべてを持って行けるわけではない。
当然いくつかに決めなくてはならない。
でも、こうして着ていくドレスを選ぶのは、本当に楽しい。
そういえば、エリノアったら。
さっきから話しかけているのに、全然、返事をしない。
返事をしないのは、難しそうな本を読んで、夢中になってるんだろう。
読書に集中してしまうと、エリノアは、周りの声が全く聞こえなくなる。
耳栓してるみたいに、何にも耳に入らなくなるのだ。
本当にエリノアは変だ。
これだけ、すばらしい衣装が並べられているのに。
妹は、着るものに興味を示さない。
ドレスに全然興味を示さないって、どういうことだろう。
メアリーは不思議に思う。