円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
きれいに着飾って、みんなの前に出たら、舞踏会で注目を浴びる。
もしかしたら、舞踏会で素敵な男性に気にいられるかも知れない。
エリノア、そんなふうに思わないのかな。
フロアで踊っていると、素敵な紳士にダンスを申し込まれて、
そこからロマンスが生まれないかしらって、思わないのかな。
メアリーは、さらにまた、別のドレスを胸に当てる。
「やっぱりこっちかしら。どう思う?」
ドレスを胸に当てるたびに期待が膨らむ。
メアリーは振り返って、彼女がいた場所を見た。
彼女が目にしたものは、
退屈そうに本を読んでいる妹の姿ではなく、
メアリーの羽飾りを手に持った、
侍女のアリスの姿だった。
「メアリーお嬢様。エリノア様なら、
ずっと前にお部屋から出て行かれました」
アリスは、ちょこんと頭を下げて
申し訳なさそうに言った。
「ずっと前に?」
最初から、エリノアは、
いなかったと聞いて、メアリーはため息をついた。
せっかく、
着せてもらったドレスを、エリノアに見てもらおうと思ったのに。