円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「エリノア、ちょっと待ちなさい」

きまりが悪かったエリノアは、
お礼を述べて、
すぐに書斎から出て行こうとした。
後ろから、ウィリアムに呼び止められた。

「なに?ウィリアム」

「手にしたの、農作物の本だろう?
君は、そんなのに興味があるのか?」

「ええ」

エリノアは昔っから変わったものに
興味を持った。


お人形を渡しても、
人形そのものよりも、それがどこで
作られたものなのか、
どんな材料で作られたのか、
そういうことの方が彼女の興味を引いた。

昔も、こうして書斎で
気のすむまで調べ終えると、
人形は気前よくメアリーに譲られた。


「読んで、どうするんです?」

「本を読んで、
理解する以外に何をするんですか?」

良かった。いつものエリノアだ。
ウィリアムは、嬉しそうに
彼女に向かって微笑む。
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