円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「本は、楽しむこともできますよ」
ウィリアムが以前のように、
彼女をからかうように言う。
「枕にして寝ることもできるわ」
エリノアも、彼に応じる。
「その本が?枕に?」
ウィリアムは、思わず口元を歪めた。
「いけませんか?」
「いけなくはないが。
眠るために読む本なら、
そんな薄くて平べったい本じゃ、
用をなさないと思うが」
ウィリアムは、彼女が
自分の挑発に乗ってくれたことが
嬉しくて、ついお節介をしてしまう。
「ご忠告ありがとうございます。
けれど、私は、
この本が一番眠るのに最適なんです。
ですから、お構いなく」
クックッとウィリアムが笑った。
「相変わらず、君は楽しいことを言うね」
「どういたしまして」
「それで?エリノア、
本気でその本を読むのかい?」
「いけませんか?」
「いけなくはないけど、それは、
随分前の本だろう?
科学的じゃないし、読んでも、
ほとん役に立たないんじゃないかな」
「べ、別にいいじゃありませんか」