24歳、恋愛処女
いままで抱いたことのない感情。
きっとこれが……愛おしいということ。

 
レストランを出ると、車で成就院へ。
長い参道の階段を、手を繋いで歩く。

「紫陽花の時期がきれいなんだけどね。
その頃になったらまたこよう」

「はい」

なぜか一緒に、真人さんと紫陽花を見たいと思った。
だから、今度は素直に返事をする。
笑って顔を見上げると、目の合った真人さんがふふっと嬉しそうに笑った。
ぎゅっと手を握り返して、本堂まで登る。
お参りをすると、ちょいちょいと手を引っ張られた。

「ここに来たかったのはね。
眺望がいいっていうのもあるんだけど」

不動明王の前に立つと、そっと耳打ちしてくる。

「……ここも縁結びの御利益があるんだ。
彩夏と結ばれるように、お願いしとかないといけないからね」

ばふっ、すぐ近くでそんな音がした。
待ち受けにするといいらしく、真人さんは携帯に写真を撮っている。

「じゃあ、行こうか」
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