24歳、恋愛処女
そっと、親指が瞼を撫で目を閉じた。
これから起こることに心臓はばくばくと早い鼓動を刻んでいる。
ちゅっ、唇にふれた、柔らかくあたたかいそれ。
これで罰は終わりなのかと目を開けかける。

「ダメだよ、いいって云うまで」

親指に軽く目尻を引っ張られ、再び瞼を閉じた。

ちゅっ、またふれた唇。
それはときどき軽く、私の唇を喰みながらふれ続ける。
少しずつ、真人さんの吐息が熱を帯びていく。

はむっ、まるで食べてしまうかのように重なった唇からぬめったそれが入ってきた。
吐息までも真人さんに食べられて、息が、苦しい。
なのに私の中に広がるのは、嬉しいって気持ち。

溢れる気持ちにどうしていいのかわらなくて、真人さんのコートをきつく掴む。

しばらくして唇が離れたときには、ぐったりと真人さんにもたれかかっていた。

「こんなキスはまだ理央としてないだろ」

ゆっくりと私の髪を撫でる手に、抱きついてうなじに顔をうずめる。
恥ずかしすぎて真人さんの顔を見れない。

「これくらいで恥ずかしがるなんて、彩夏は可愛いね」
< 117 / 158 >

この作品をシェア

pagetop