24歳、恋愛処女
ずっと佐伯さんのことを私はどこかで見下していたけれど、私の方がずっとずっと最低な人間だ。
それに、兄にずっと見下されて生きてきてそんな人間じゃないって反発してたけど、本当の自分はそのとおりの人間だったんだ。


 
通された個室で、すでに真人さんは待っていた。

「……」

目を伏せて黙って座った私に、手酌で飲んでいたビールのグラスを置く。

「ひとつだけ理央が来る前に謝っておく。
このあいだの上司の件は疑って悪かった。
その、……院長にも云われたから」

そうか、松本課長はちゃんとフォローしてくれたんだ。

「でも、理央とのことは赦してないから」

「……はい」

重い時間に押しつぶされそうになっていた頃、ようやく理央が来た。

「待たせて悪かった」

「……」
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