24歳、恋愛処女
「……」

私も真人さんも無言。
上座に座る真人さんと下座に座る私に、どこに座っていいのか迷っているようだった理央は、いわゆるお誕生日席に腰を下ろした。

「じゃあ聞こうか、云い訳」

自虐的に笑う真人さんの声が、冷たく胸に突き刺さる。
銀縁眼鏡のせいか、まるでつららが突き刺さったかのよう。

「理央に断りを云いに行ったけど、云い出せなくて。
理央のコンプレックスの話を聞いたら、自分も同じだったから。
同情して、約束を破った後ろめたさもあって、それで」

「それで、僕を裏切ったんだ」

くいっ、グラスに残ってたビールを真人さんは一気に開けた。
瓶を持ち上げると空だったようで、小さく舌打ちをすると置く。

「ちょっと待てよ。
じゃあ、彩夏ちゃんは俺より先に兄さんに抱かれてたってことかよ」

「……そう、です」

「……」

顔を渋らせるとグラスを握った真人さんだったけど、すぐに空だったことを思い出してカツンと堅い音を立ててテーブルの上に戻す。
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