24歳、恋愛処女
通勤帰りでラッシュの時間。
地下鉄に乗るとさりげなく、ドア側にしてくれた。
私の前に立つと、人から押しつぶされないようにしてくれる。
そういう動作が自然で、女性の扱いになれてることをにおわせた。

二駅で地下鉄を降り、地上に出て五分。
一本路地を入った、雑居ビルの一階が目的のお店。

「こんなことろに店があるんですね」

感心したように荻原先生は頷いているが、確かにここは少し、わかりづらい。
そのぶん、ミーハーな客で込むことがなくて静かでいいのだ。

「なに、飲みます?」

待たされることなく店に入り、席に着く。
とりあえず頼むのは飲み物。
車は置いてきたと云っていたし、アルコールもOKだよね。

「私はいつも、日本酒なんですが。
荻原先生は?」

「じゃあ僕も、日本酒にしようかな。
あと、“先生”はやめてください」

「え?
なんでですか?」

歯医者さんなんだから、先生だよね?
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