24歳、恋愛処女
荻原さんと私は、ただのお友達だと。
食べ物の趣味が合う、友達だと思っていたのだけれど……。

「彩夏ちゃんにその気がなくても、兄さんはそういうつもりだと思うけど。
しかもあんな、デレデレした気持ち悪い兄さん、いままで見たことない」

「あ……。
えっと……」

あたまの中がぐるぐる回る。
そんなこと、全然意識したことなかった。

「彩夏ちゃん?
足でも捻ったのか?」

「大丈夫、です。
……今日はもう、帰ります」

怪訝そうな理央さんを残してマシンルームを出る。
まだトレーニングメニューは残ってたが、今日はもうそういう気分じゃない。

家に帰ってもなんだか変な気分で、晩ごはんを残したら母に怒られた。
小言を続ける母を無視して自分の部屋に行きベッドに寝ころぶと、思わずため息が出る。

……デート、とか意識したことなかった。
ただ、荻原さんといるのは楽しくて。
何度か行った、男性とふたりの食事みたいに、窮屈じゃなくて。
私にしてみれば、それだけだったんだけど。
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