24歳、恋愛処女
気付かなかったフリをして、これまで通りにしていたらいいんだろうか。
それとも恋愛に興味がないんだと、はっきり云った方が?

いままでだったら、はっきり云っていた。
そういう感情を向けられるのは迷惑だって。

なのに、迷ってる自分がいる。
こんなことは初めてで、どうしていいのかわからない。


 
迷って迷ってあたまの中はぐちゃぐちゃで。

「……村さん。
二村さん!」

名前を呼ばれて我に返った。
ぴっ、松本課長の手がコピー機のスイッチを押し、吐き出され続けてた紙が止まる。
二十部でよかったはずのコピーは二百部設定になっていて、受け皿からはあふれた紙が床にひらひらと舞って広がっている。

「心ここにあらず。
最近、ミスが多いよ」

「……すみません」

思わず、ガーゼの貼られた左手を隠してしまう。
昨日、つまらないミスで火傷をした痕。
< 54 / 158 >

この作品をシェア

pagetop