空に咲く花とキミを
季節は夏ーーー7月になったばかりで梅雨明け間近の今日は、久しぶりによく晴れていた。

外を歩けば、きっとすぐに汗だくになってしまうのだろう。

「事務所までは15分くらいかな、駅裏にあるんだ。そこで、契約と作業着の貸し出しをするからね」

「安全靴も履くんですか?」

松井さんの言葉に、直くんが質問を投げかける。

「そうだね、やっぱ安全第一だから。靴も貸し出しします」

「職場までの送迎は、松井さんが?」

「まさか、自分がそこまでしてたら身体がもたないよ(笑)。ちゃんと送迎バスがあるから」

言いながら、あははと笑う松井さん。

「そうなんですね」

あたしは、2人の会話を聞いているだけだった。

会話に入っていけない、と言った方が正しいのかな、直くんは滑らかに話しているけど、あたしは初めてでわからないことだらけだった。

派遣社員という働き方があることも、寮や送迎があることも、何にも知らなかったあたし。

「……」

直くんに誘われて、その知らない世界に飛び込むことに決めた。


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