空に咲く花とキミを
あたしは生まれてから昨日まで、ずっと実家に住んでいて、短大を卒業してからは地元でアルバイトをしていたから、ある意味世間知らずなのかもしれない。



それでもあたしは、この町での新しい生活に賭けていた……。


初めて見る街並みを、その景色を、車の中から眺めるあたしは、真剣そのものだった。

直くんという、付き合っている彼氏という存在から一緒に住まないかと言われて、断る理由なんてなかった。

ーーー断れなかった。

だから賭けた。


ここが、今日からあたしが暮らす町。

直くんと…暮らす町。


「着いたよ」

松井さんが言った後、ピーピーと車が駐車場にバックする音が耳に入ってきた。

松井さんの後についてビルの中へ入り、事務所へ案内されると、

「こんにちは。今コーヒーでもいれますね」

と、事務員さんだろうか、女性のスタッフが笑顔で迎えてくれた。

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