空に咲く花とキミを
「華…」

直くんに改まって名前を呼ばれたのは、2人でよく行く焼肉屋さんで、直くんがビールのジョッキを半分空けた時だった。

「なに?」

少し緊張ぎみに返事をしたあたしは、ウーロン茶を一口飲み込んだ。

どうせ悪い話に決まってる。


「オレ実は、仕事が決まったんだ」

「え…」

それは、あたしの期待を良い意味で裏切る内容で、あたしは、今まさに口に放り込もうとしたカルビを落としそうになった。

「なんだよ、その反応は」

「あ、いや、ごめんっ!おめでとうっ!じゃあ今日はお祝いだね!」

「おう」

あたしと会っていない間、ちゃんと就活していてくれたんだ……良かった、うれしい。

直くんのこと、少し見直したかも。

「ねぇ、どんな仕事するの⁈」

「車の工場。期間工ってヤツだけどな。県内だけど少し遠くて寮生活になるから、あんまり会えないけど我慢しろよ」


< 43 / 261 >

この作品をシェア

pagetop