空に咲く花とキミを
すぐに眠りに就き、規則正しい寝息を立てはじめた直くんを確認して、あたしは居間に移動した。

「…」

静まり返った部屋にライターの音が響き、あたしは電気もつけずにタバコをふかし、頬杖をついた。

タバコの煙を見ながら…ただボーっとしていたかった。


「……」

明日は職場見学があるって、松井さんが言ってたな……て、もう日付け変わったから今日か。

環境が変わって心機一転と思っているのは、あたしも直くんも同じだけど、あたしは本気で人生の岐路に立たされている気分だ。

だからなのか、直くんとのあれこれがやたら思い出される。


「早く寝なきゃ…」

ふぅっ……と、煙を吐いてから、タバコを灰皿に押し付けたーーー。



次の日、再び松井さんと合流したあたしと直くんは、予定通り職場見学に行った。

そこは自動車部品の製造工場で、社会人経験が浅いあたしは、見るもの全てが新鮮だった。

職場見学が終わった後は、食堂や喫煙所などの設備を案内してくれた。

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