《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~
コルトは大きな扉の前で足を止めるとこちらに向き直り、にこりと微笑んだ。
「申し訳ございません。たくさん歩かせてしまいましたね。今からこちらの部屋でスズラン様の身の回りのお支度を致します。準備がお済み次第、再度私が晩餐会の会場である広間まで付き添いますので」
「いえ。あ、あの、身の回りの…って…」
「ああ、ご心配なく。お支度をするのは私ではなく、私の妹ですので!」
「妹さん…ですか?」
「兄としての贔屓目を抜きにしても気さくでなかなか良い奴ですから。どうかそんなに畏まらずに」
「は、い…」
そうは言ってもやはり緊張は増す一方だ。スズランに対するコルトの言動や姿勢は全てにおいて紳士的であり落ち着いている。そう考えればその妹である人物にそこまで警戒心を持たなくて良い筈だ。
しかし『お支度』と言われても、一体何をすべきなのか、何をどうしたら良いのかが全く分からないのでどうしても不安が付きまとう。
そんなスズランの心情をよそに、軽い調子で扉を叩き中へと入るコルト。次いでスズランも部屋へと足を運んだのだが、唐突に威勢の良い声が辺りに響き渡った。
「兄さん遅い!! やっっと来た!」
「申し訳ございません。たくさん歩かせてしまいましたね。今からこちらの部屋でスズラン様の身の回りのお支度を致します。準備がお済み次第、再度私が晩餐会の会場である広間まで付き添いますので」
「いえ。あ、あの、身の回りの…って…」
「ああ、ご心配なく。お支度をするのは私ではなく、私の妹ですので!」
「妹さん…ですか?」
「兄としての贔屓目を抜きにしても気さくでなかなか良い奴ですから。どうかそんなに畏まらずに」
「は、い…」
そうは言ってもやはり緊張は増す一方だ。スズランに対するコルトの言動や姿勢は全てにおいて紳士的であり落ち着いている。そう考えればその妹である人物にそこまで警戒心を持たなくて良い筈だ。
しかし『お支度』と言われても、一体何をすべきなのか、何をどうしたら良いのかが全く分からないのでどうしても不安が付きまとう。
そんなスズランの心情をよそに、軽い調子で扉を叩き中へと入るコルト。次いでスズランも部屋へと足を運んだのだが、唐突に威勢の良い声が辺りに響き渡った。
「兄さん遅い!! やっっと来た!」