《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~
「悪かったよ。どうやら何かミスがあったらしくて、先方に要件が正しく伝わっていなかったみたいなんだ。でもこうしてちゃんとスズラン様をお連れ出来たのだから合格でしょう?」

 コルトは少し砕けた口調で威勢の良い声の主に、事の経緯を説明した。

「まあ、そうね。お手柄よ兄さん! まったく殿下ったら何をうだうだと遠慮しているのか、お優しいと言うか昔から肝心な所で押しが弱いんだから!! そこが殿下の良いところでもあると言えばそうですけど、でも女の子はもっとこう! 強引にかっさらう感じで来てもらわないとよね? スズラン様もそうお思いになりません?」

「えっ! ええっと、あの…」

 しかし声の主は圧倒する程の勢いで話し出す上に、最後の問いは返答に困る。殿下と言うのはもちろんライアの事なのだろうが、この問いに素直に返事をして良いのか。いや、良いわけが無い。

「こらこらサリー! スズラン様が驚かれてるのでもう少し抑えようか…。それに、初めてお会いするのだから先ずはご挨拶をしなければ不敬でしょう?」

 よく喋る女性はコルトの指摘に、可愛らしく咳払いをして名乗ると茶目っ気たっぷりの瞳で微笑んだ。そしてそのまま恭しく頭を垂れる。
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