A・O・I
「なるほど、なるほど。...........それで、つかぬ事をお聞きしますが、あなたの恋人は、さっきのお連れの方でしょうか?」
「いえいえっ!!彼は取引先の会社の人で、今日は、たまたまといいますか、偶然会っただけで。昔からの付き合いではあるんですけど...........。」
「それでは、今現在心に留めている方はいらっしゃいませんか?」
「.....................。」
頭に浮かぶのは...........
「いるようですね。」
「えっ?」
ニッコリ笑うその人は、また私を見透かす様に見つめる。
「いえ...........恋人とか結婚とか、私は求めてないんです。」
「そうですか?」
一頻り私の話を聞いた後、彼は暫く黙り込んだ。
腕組みしながら、顎に手を添えて考えてる姿は、とても様になっていて、まるで、ミステリー小説のトリックでも考えている探偵の様だ。
無意識に一定のリズムを刻んでいる指が、男の人にしては、とても白くて長く綺麗だった。
服装にしても、持ち物にしても、完璧なまでに美しく保っている。
まるで全部が新品みたいだ。
人なんて、ある程度生きていたら、何処かしらくたびれた所が見えてくる筈だし、ある意味そうゆう所を見て、安心を覚える事が私にはある。
でも、この目の前の男性には、そんな所が何一つも無く、それが余計にこの人を神秘的に見せていた。