【B】眠らない街で愛を囁いて
14.守りたい少女 -千翔-


叶夢が退院した夜、俺はB.C. square TOKYOに戻って、
何時ものようにコンビニへと顔を出した。


叶夢が復帰するのにスムーズなように、
人間関係だけは構築する手助けをしたくて。


毎度、似たようなものを手にしてレジへと向かうと
俺の時間には見慣れない男の子と、永橋さんがシフトに入ってるみたいだった。

男の子がレジで何かをしている傍で、
永橋さんが以前の叶夢のように品出しを必死に頑張ってるみたいだった。



「こんばんは。
 今日もお疲れ様」

「あっ、千翔さんお疲れ様ですって、
 あぁ、いつも叶夢と話してる時の癖で、千翔さんって呼んじゃった。
 すいません」


そう言いながら、そこまで悪気もなさそうに説明する。
別に俺の名前で呼ばれることには抵抗はない。


「別に気にしてませんよ」

「あっ、レジ塞がってますね。
 私、対応しますね」


そういって彼女は作業の手を止めて、レジへと急いでくれる。


「叶夢、本当に体調大丈夫なのかな?
 店長に、明日からシフト復帰するって連絡してきたんですよ。

 入院してたんですよね。入院」


永橋さんの言葉に何となくそんな予感がしていたので、
「そうなんですね。シフト、教えてもらえますか?様子見に来ますよ」っと自然に切り返した。

彼女の中では、俺の存在は叶夢の彼氏と言うポジションに近い。
本当にそうなれると、どんなにいいだろうかと思う。

だけど今は、ゆっくり焦らず時間をかけて入り込んでいけばいい。
そんな風に言い聞かせる。


「明日のシフト、9時から13時みたいです。
 流石に病み上がりで9時から17時は店長も断ったみたいです」

「わかりました。
 なら時間を見て顔を出します」

「お願いします」


そう言うと、レジの業務も終わって「有難うございました」っと言う俺を見送る永橋さんの声が店内に響いた。




翌日、午前中の間に仕事を終えて13時前に彼女の職場へと顔を出した。
うん、今日は顔色は悪くなさそうだね。


真っ先に彼女の表情を確認して安堵する。


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