【B】眠らない街で愛を囁いて
17.ストーカ-?現れた高校生 -叶夢-


7月の海の日を過ぎた頃、夏休みだけということで私の職場に
女子高生が採用されてやってきた。


「今日からお世話になります。
 馬上貴江【はがみ たかえ】です。

 夏休みの間だけの短い間ですが、
 どうぞ宜しくお願いします」



そう言って私と織笑に向かって、カウンターの傍でお辞儀をした。



「永橋です。
 一応、ここで3年バイトしてます。
 高校生の時からお世話になってるから」

「えっと、名桐です。
 私はまだこの春からなんで経験は浅いんですが、
 宜しくお願いします」


お互いが挨拶をを返すと、
馬上さんは「宜しくお願いします」っと再び声を返した。




二人でやっていた時代と違って実習生が一人仲間に入ると言うことは、
一人は実習生の指導へと奪われる。



「なら叶夢、馬上さん指導してみる?」


突然の織笑の言葉に経験の浅い私は戸惑う。


「あっ、でも永橋さんのお時間が許せるなら、
 私、永橋さんに教えていただきたいです。

 間違ったこと教えられても困りますし、
 名桐さんはまだ経験が浅いんですよね」



そうやって切り返してきた馬上さんの言葉に、
私は織笑と顔を見合わせる。


馬上さんの物言いに怒りを覚えた織笑は、
何かを言い返しそうな素振りをみせたのを私は首を横に振ってとめた。




「そうだよね。
 経験の浅い私より、永橋さんの方が安心だもんね。

 織笑、新人指導お願いね。

 その間のレジや品出しとかは私に任せてくれていいから」



そう言って私は忙しさを演出するように事務所へと飛び込んだ。




「おぉ名桐。事務所のドアを壊す気か?」


ストアーコンピューターを覗き込みながら、
何かの作業をしている店長が、その手を止めて私の方に視線を向ける。
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