【B】眠らない街で愛を囁いて
19.解雇を言い渡された日 -叶夢-

馬上貴江。
海の日からうちの職場でアルバイトを始めた新人女子高生。


彼女は千翔さんを親しげに呼び、
何かと私に敵意をむき出しにしてきた。

わざと私とシフトを組んで一緒に入って、
お客様を巻き込んで、めちゃくちゃな接客をする。


千翔さんに相談したくても、あの日から千翔さんはお店に来ることがなくなった。
ラインと電話で毎日、連絡はしていてもどちらも顔を見て話すことは出来ない。


私と連絡しながら、馬上さんが傍に居るんじゃないかって考えただけで
嫉妬に狂いそうになる私が居た。


当初は精神的に余裕がなくなっていく仕事のストレスだけだった。

だけどそこにやがて、特異体質の地震体感が混ざり始める。


強い耳鳴りが延々と続く時間。
吐き気に眩暈に、頭痛が重なり、体のあちこちに針を突き刺すようなそんな痛みが
電気と共に走っていく。


そんな時間に負けて仕事を休んだ日、彼女は私を殺そうと刃物を握りしめた。




意識を失ってしまった私が一度入院したことのある大学病院で、
目を覚ましたのは事件から一週間以上が過ぎた、お盆前のことだった。


忙しい夏休みに、こんなにも長く仕事を休んでしまったことに焦った私は、
目覚めてすぐに職場へと電話をした。

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