誰にも言えない秘密の結婚
「明?ゴメン……」
拓海さんの言葉に私は首を左右に振った。
「俺があんなこと言ったから……」
再び首を左右に振る。
「有本に話してくる」
そう言って立ち上がろうとした拓海さんの腕を掴んだ。
「明?」
「もう、いいです……大丈夫、ですから……」
「でも……」
「本当に大丈夫ですから……」
「…………うん」
私はカケラを拾っていく。
拓海さんも再びカケラを拾うのを手伝ってくれた。
何も話さず、せっせと片付けていく。
「明?今日はもう帰れ」
「えっ?」
拓海さんに突然そう言われて手が止まった。
「体調、良くないんだろ?」
「大丈夫です」
「嘘つくなよ。明が嘘ついた時の癖」
拓海さんに言われ、ハッとして髪を触っていた手を下ろした。
確かに最近は体調が良くない。
夜もあまり眠れなくて寝不足気味で、頭痛も続いている。
あと3日頑張れば休みだからと、そう自分に言い聞かせて鎮痛剤を飲んでいた。
事務所でも家でも普通に、いつも通りに振る舞っていたのに……。