誰にも言えない秘密の結婚
「だから今日はもう帰って、ゆっくり休みなよ」
私は首を左右に振った。
仕事はまだ残っている。
このまま中途半端に終わらせて帰ったら、みんなに迷惑をかけてしまう。
「みんなに迷惑かけるとか思ってる?」
「はい……」
「そんなこと気にしなくていいの。これは副社長としての俺からの命令」
拓海さんはそう言って、優しい笑顔を見せてくれた。
「すみません……」
「謝らなくていいから。ここは俺が片付けとくからね」
「はい……」
もう何を言っても拓海さんは私が仕事に戻ることは許さないだろう。
だったらここは素直に早退して、帰ってゆっくり休んだ方がいいと思った。
明日には体調も戻って、いつも通りに出勤出来ると思っていたのに……。