誰にも言えない秘密の結婚
口角が切れたのか、血が流れてる。
「社長!大丈夫ですか?」
私は社長の側に駆け寄った。
身体を起こし、手で血を拭う。
「タオル、持って来ます」
「いや、いい。大丈夫だから」
「でも……」
本当に大丈夫なのかな。
かなり血が出てるけど……。
私は拓海さんの方を向いた。
社長を睨みつけている拓海さん。
その顔は怒りに満ちていて、背中にゾクリと寒気が走った。
「何で空翔と明が一緒にいるんだよ?」
「お前さぁ、なんか勘違いしてないか?」
「はっ?」
「社長が私の実家に来て……私をここに連れて来てくれたんです……」
「えっ?」
拓海さんの顔は、いつもの拓海さんの顔に戻っていた。
「お前は明ちゃんに会いに行っても会えない、明ちゃんはお前に会おうとしない。これだったら平行線のままで何も解決にならない。だったら俺が明ちゃんに会って、話をしようと思ったんだよ。仕事中も上の空で見てられなかったからな」
「空翔……俺、てっきり……」
「お前はバカか。俺は嫁さん一筋なんだよ。それは拓海もわかってるだろ?」
「あ、いや、ゴメン……」
拓海さんはそう言って、社長に頭を下げた。