誰にも言えない秘密の結婚
「あ、コーヒー、冷めちゃったね。淹れ直そうか?」
「このままで、大丈夫です」
「そう?」
「はい」
私はコーヒーにミルクを入れて、スプーンでクルクルかき混ぜた。
少し冷めたコーヒーだけど、拓海さんが淹れたコーヒーはやっぱり美味しい。
「買ったこれ、見てみる?」
「はい」
拓海さんはテーブルに置いていた旅行本を袋から出した。
拓海さんが本を1ページずつめくっていく。
「わわっ!水族館がある!」
そう言った私を見て、拓海さんはクスクス笑ってる。
「可愛いね」
「ですよね〜!このアザラシ、可愛いです!」
「じゃなくて、明が」
「えっ?」
私は拓海さんの方を見た。
笑顔の拓海さんが私を見てる。
「はしゃいでる明の姿、初めて見たから。可愛いと思っちゃった」
「い、いや、そんな……」
そんなこと言われたら恥ずかしいよ……。
私は拓海さんから目を逸らし、下を向いた。
「水族館、好き?」
コクコク頷く私。
「行きたい?」
再びコクコク頷く。
「水族館、行こうね」
拓海さんはそう言って、私の頭を撫でてきた。