誰にも言えない秘密の結婚
建築模型の仕事を全くやったことがないわけではなかった。
でも手伝い程度で、いきなり建築模型と道具類を置かれ、やっとけと言われても困る。
社長も藤原さんもパソコンに向かって黙々と仕事をしている。
だから2人に聞きながらやる事は出来ない。
どうしたらいいの?
「吉田、帰っていいよ」
藤原さんはパソコンの画面を見たままそう言ってきた。
「でも……」
「吉田も何か用事があるんだろ?」
藤原さんは私の方を見て、笑顔でそう言った。
まるで心を見透かされてるようだった。
今日は父親の誕生日で、駅で待ち合わせして家族で食事の約束をしていた。
「西山には俺から言っとくから、帰っていいよ」
「…………す、すみません」
私は藤原さんに頭を下げて、鞄を持って社長と藤原さんに挨拶して事務所を後にした。