誰にも言えない秘密の結婚



次の日、ドキドキしながら事務所に入った。


西山さんに何か言われるんじゃないかと……。


暴言吐かれたらどうしよう……。


そんな思いが頭をグルグル回っていた。



「おはよう、ございます……」



事務所に入ると、社長と藤原さんしかいなくて、他の4人はまだ出社してなかった。



「おはよう」


「おはよう」



社長と藤原さんが挨拶をしてくれてる。


鞄を置いて、デスクの上を見ると、昨日、西山さんに頼まれた建築模型が出来ていた。


完璧に出来上がった建築模型。


…………まさか。



「あの、藤原さん……これ……」


「ん?あぁ、別に今日に明日にって急ぎの仕事ではなかったんだけど、スタディ模型、俺もアシスタントの時は作ってたなぁって昔を思い出したら、夢中になってついつい最後までやっちゃった」



藤原さんはそう言ってクスリと笑った。



「えっ……」



最後までって……。


もし西山さんに、藤原さんがやったことがバレたら……。



「それ、吉田がやったことにしとけばいいから」



いやいや、そういうことではなくて。


藤原さんはそれでいいかもしれないけど。


でも私は……。



「ありがとう、ございます……」



お礼を言うことしか出来なかった。




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