誰にも言えない秘密の結婚
有本さんは下を向いたまま顔を上げようとしない。
「有本さん?こっちに来て座って下さい」
私の言葉に有本さんは、ゆっくり歩いて椅子に座った。
私も身体を起こして、ベッドの上に座る。
「吉田……私……私……」
有本さんがグズグズと鼻を啜る。
スカートをギュッと握っていた手の上に涙がポタポタと零れ落ちていく。
「もう、いいです……」
「えっ?」
顔を上げた有本さんは、目が真っ赤に腫れて、鼻の頭も赤く、化粧が落ちて、涙でぐちゃぐちゃだった。
「もう、いいです。有本さんがここに来てくれただけで、私は嬉しいです」
「吉田……」
「私、こんな性格だから、小学生の頃からイジメられてて……私のことなんか好きになってくれる男性なんかいないって……一生、恋愛も結婚も無理だと思ってた私に手を差し伸べてくれたのが、拓海さんで……」
有本さんは私の話を黙って聞いていた。
「有本さんは、私より先に拓海さんを好きになったのにって言ってましたが、人を好きになるのに順番は関係ないと思います……」
「うん……」
「有本さん、そこは、吉田のくせに!って言って下さいよ!」
「えっ?」
「吉田のくせに生意気だ!って」
私はそう言ってクスクス笑うと、有本さんも泣きながら笑う。