誰にも言えない秘密の結婚
視線を感じる。
ピザを食べていた手を止め、顔を上げると、藤原さんがジーと私を見ていた。
ドクンと胸が鳴り、恥ずかしくなって思わず目を逸らす。
「もったいないよね」
「えっ?」
逸らしていた視線を藤原さんに戻したけど、ジーと見ることが出来ない。
「せっかく綺麗にメイクしてるのに、マスクしてたらもったいよ」
「えっ……」
私は鞄の上に置いたマスクな目を移した。
「メイクは、社会人としての身だしなみでしているのと、スッピンを人様には見せられないので……。マスクは、これがないとダメなんです……」
「何で?」
「えっと、その……それは……」
「…………ゴメン。変なこと聞いて」
なかなか理由を言おうとしない私に藤原さんは謝ってきた。
「いえ……」
それからは特に会話もなく、食べ終えてカフェを出た。
藤原さんがお金を出してくれて、払うと言ったのにお金は受け取ってもらえなかった。