誰にも言えない秘密の結婚
「ありがとうございました。ごちそうさまでした」
「いや、付き合ってもらったんだからお礼を言うのは、こっちの方だよ。ありがとな」
藤原さんはそう言って、私の頭にポンと手を乗っけてきた。
藤原さんにとって、そういうことって挨拶みたいなものなんだろうけど、男性に免疫のない私にとっては、どうしていいのかわからないと言うか、どう反応したらいいのかわからない。
こんな時、有本さんだったらどうすんだろう……。
って、何で有本さんが出てくる。
と、とりあえず、藤原さんは仕事が残っているから、私が早く帰ってあげなきゃ事務所に戻れない。
「あ、あ、あの……」
帰ることを伝えようとした時……。
「あ、ゴメン、電話。ちょっと待ってて?」
藤原さんは手に持っていたスマホの画面を見る。
「空翔からだ」
そう言って、私に背を向けて電話に出た。
「もしもし?……あーゴメン、吉田とバッタリ会って一緒に飯食ってた。……うん、わかってるよ。ちゃんと買って帰るから待ってろ。じゃあな」
藤原さんは電話を終えて、私の方に向いた。