誰にも言えない秘密の結婚
「空翔が腹減って死にそうだって。空翔のご飯のことなんてスッカリ忘れてたよ」
藤原さんはケラケラ笑う。
「それって大変なことじゃないですか!早く買って帰ってあげて下さい」
「空翔は家に帰ったら奥さんがいて可愛い子供がいて、奥さんの手料理が食べれるのにね。ワザワザ事務所でコンビニ飯食べながら仕事しなくてもいいのに」
「そうなんですね」
私は何で答えていいのかわからなくて、無難にそう言ってはみたけど、藤原さんは社長のことが羨ましいのかな?
でも藤原さんってモテるだろうし、ご飯作りに来てくれる人なんて沢山いるだろうし、寧ろ女性の方から作りに行かせて欲しいとか言われてそう。
「ねぇ、吉田?」
「あ、は、はい」
「ちょっと散歩して帰らない?」
「えっ?」
「あ、早く帰らなきゃいけなかったかな?週末だもんね。無理に誘ってゴメン……」
「あ、いや、そうではなくて。社長が待ってるから早く帰ってあげた方が……」
「あー……空翔はほっとけばいいよ。子供じゃないんだからさ。事務所の冷蔵庫漁れば何かあるだろうし、自分でコンビニに買いに行くことだって出来るでしょ?」
「そうですけど……」
再び藤原さんが私の手をギュッと握ってきた。
驚いて肩がビクンと揺れる。
藤原さんは何も言わずに私の手を引っ張って歩き出した。