誰にも言えない秘密の結婚



藤原さんと来たのは、事務所近くの公園だった。


4月。


季節は春なのに、夜は薄手のガーディガンでは少し肌寒いくらい。



「桜、咲いてるかな?と、思ったんだけど、まだみたいだね」



藤原さんはそう言って、桜の木の側にあるベンチに座った。


まだ蕾の桜。


咲くのは、もう少し先になりそうかな。


私もベンチに座る。


藤原さんと少しだけ距離を置いて。


花見客もいない静かな公園。



「吉田?」


「はい」


「何か、あった?」


「えっ?」



藤原さんの方を見ると、藤原さんも私の方を見ていてバチっと目が合った。




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