ミツバチのアンモラル
一瞬硬直したものの、すぐさま抵抗を始めた圭くんに、けれど本気で突き放すことなどしないともう解ってしまった私は行為をやめたりはしなかった。
当然ながらのファーストキスは拙いもので、唇同士を触れ合わせることしか叶わない。
攻防の中、ライトな部類に入るだろうに漏れる吐息が生々しくて、恥ずかしくなり唇を離す。けれど逃がすまいと、すかさず圭くんを抱きしめた。強請ってきたのは抱きしめてもらうのとはまた違う、好きな人を私全部で包み込めたことに、喜びを感じた。
震える圭くんは何が恐ろしいのか。
考えられることを、違うのだと証明していく。
「圭くん――私は、今こうして圭くんに触れることが出来て幸せだよ。不幸なんてひとつもない。圭くんに好きだと伝えられて幸せ。圭くんの本当の気持ちを聞けたらもっと」
「それは……っ」
「大丈夫。私は事故になんて遭わない。いなくならないし、圭くんの気持ちで幸せを得ることはあっても、それ以外はないよ。だから、圭くんからも私に触ってほしい。大丈夫だって、私がこれから幾らでも証明してあげる。私が好きなら。好きって言いながら誰よりも近くにずっといてよ。他の女になんか渡さない。私だけにして。どんなことでもどんとこいだから」
そうして、そろそろと、恐る恐るようやく圭くんを抱きしめる私の背中に腕が回る。
あまりのスピードの遅さに、強要していないかと不安になった弱い心が鎌首をもたげた。
「……でも、圭くんが今はもう、本当に私を妹だと思っていたら、我が儘叶えるためだけに……こんなことしないで」
「っ!! そんなわけないだろ僕がとれだけ……っ」
返事とばかりに強く抱きしめ返された瞬間、ずっと堪えていた涙が溢れてくる。
長い初恋の成就による、嬉しい涙だ。
圭くんの憂いが全て消えてくれていたらいいなと、切に願う。
零れ続ける涙を唇で拭われると、もっと止まらなくなった。
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