キミの音を聴きたくて
いつだって、月野さんの視線は鶴本くんに向いている。
そのことはきっとクラス全員の周知の事実だから、触れたりはしていなかった。
いつも無気力で、あまり関心を示さない鶴本くん。
眠そうでゆったりとしているけれど、ドラムを叩いているときは目つきが違っていた。
彼はポーカーフェイスなせいか、あまり感情が読めない。
天音先輩とはまた別のタイプの……。
って、どうして私は天音先輩のことを考えているんだろう。
家まで運んでくれた日から、気づけば彼のことを考えている気がする。
この気持ちは、なんなんだろうか。
「ねえ、陽葵ちゃんは好きな人いる?」
いきなりの質問に、思わず大袈裟に咳き込んでしまった。