キミの音を聴きたくて


「私は、いないよ。
恋なんてしたこともないし」



そっけなく答えると、日々ちゃんは口を尖らせて。



「えーっ、もったいない!」



と連呼する。




もったいない、だなんて。



私には、人が恋に落ちるという心理が理解できない。



気づいたら、落ちている。
なんてよく聞くけれど、そんな直感で気持ちが左右されるはずないのに。




「そう言う丸山さんもいないんでしょ?」



すかさず相川さんのツッコミが入り、日々ちゃんが言葉に詰まる。



どうしてだろう。



何気ない会話なのに、こんなにも楽しいなんて。




「でも、聞いちゃったんだよね。
錦戸くんが、音中さんは生徒会長とデート……」



「ちょっ……!」



慌てて月野さんの口を塞ぐ。

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