偽りの婚約者に溺愛されています
「本当に?へえ。すごいな、君」

なにを褒められているのか分からない。
どうしたらよいか分からず、ふにゃっと曖昧に笑う。

こんな調子で、久々にバスケをして勝てるのか分からなくなってきた。
もう、いっぱいいっぱいだ。

「ワンゲームだけ。彼女とやらせてくれないか」

コートの真ん中まで来ると、智也さんが選手たちに言った。

「いいですよ。カップル対決なんて粋ですね。ケンカですか?俺たちが見届けますよ」

選手たちが珍しそうに見物している異様な空気の中、彼は先ほど声をかけてきた選手から投げられたボールをパシッと受け取ると、足元で軽くドリブルをする。

「ワンゴールで終わりだ」

「はい」

もう後には引けない。
やるしかないのだ。

覚悟を決めた瞬間、彼から選手にボールが投げ返される。それが高く頭上に放たれ、智也さんと同時にジャンプする。
えっ。
高い。

私よりもさらに高く跳び上がった智也さんが、ボールを取った瞬間、今度は身体を低くしてドリブルをしながら駆け出す。

早い。なんで?
私は彼のプレイに、手も足も出ない。

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