偽りの婚約者に溺愛されています
はあ、と思わず漏れたため息と同時に前を向く。
今はササ印を去り、信頼回復に努めることが先決だ。
誰を責めても、起こったことは事実でしかない。
そんなことを思いながら、部署へと急いだ。
「松雪さん!サインペンの速乾性インクの特許を出願できるかもしれないそうです」
「本当に?」
部署へと足を踏み入れた瞬間、夢子が駆け寄ってきた。
「はい。工場から打診があって。これが万が一通れば、すごいことですよね」
眩しいほどの満面の笑みを俺に向け、興奮気味に話す彼女を見下ろす。
「そうか。本当にすごいな」
「はいっ。私ね、ここまでになってきて、なんだか自信がついてきました」
「そう。君はよく頑張った。いつかやり遂げると思ってた」
嬉しそうに俺を見上げる目は、キラキラと輝いている。
そんな君に、俺はなにができるだろう。