偽りの婚約者に溺愛されています
「……大丈夫か?少し無理をさせたかな」
うつ伏せでベッドの上に寝そべる私の隣に、彼が座って尋ねる。その長い指が、私の乱れた髪をそっと直す。
「体力には……自信がありますから」
大丈夫だという意味で言うと、彼は勘違いをしたようだ。
「お?それはさらなるお誘い?……いやぁ、気に入ってもらえてよかった。いつでもお付き合いしますよ。年中無休でな」
「な……っ」
ガバッと起き上がる。
「いや、案外大胆なんだな。そういう誘われ方は好きだけどな」
私のはだけた胸元を見て、彼はニヤニヤしている。
「ん?……うおっ!?」
彼の視線の先にある、自分の身体を見下ろした。
「ぎっ、ぎゃあああ」
シーツにくるまり、再び寝そべる私を見て、彼は大笑いをした。
「ははははっ。冗談だよ。単純だな。だから面白いんだけどな。目が離せない」
「もうっ。そういうことを言うのはやめてください」
そんな彼に、ふと聞いてみる。
「修吾さんと桃華さんはどうなってるかな……。私は智也さんとこうなってしまって、本当によかったんでしょうか」
「彼らは大丈夫だ。小さな頃から一緒に過ごしている俺が言うんだから間違いない。桃華は修吾に、俺との婚約をやめるように言ってほしかったんだよな。だけどあいつは、反対に彼女を妬かせようとした」
面白そうに話す彼は、初めからこうなることを本当に分かっていたように見えた。
「今頃また、ケンカしてるかもな。だけど最後には分かり合えるはずだ。お互いを好きなのは確かなんだから。離れたくてもそうできない。心が求め合う限りはな」