偽りの婚約者に溺愛されています

私は彼を見つめたまま、手を伸ばした。

「そう。どうしても無理なんですよね。実は私も、何度も智也さんを諦めようとしたんです。だけど……ダメだった。会いたくて……苦しかった」

私の手を掴み、彼は微笑んだ。

「諦めるだなんてひどいな。好きだと言ったのに。いい加減、信じてもらえないだろうか。もう言い尽くして言葉がないよ」

そっと起き上がると、彼を近くで見つめた。

「信じてないわけじゃない。私が、自信がなかったから。でも……伝わったから。綺麗だと言ってくれたことを、もう信じてもいいかなって。自分が……あんなふうになるなんて、知らなかった」

途絶えることなく何度も愛を囁きながら、愛おしそうに私の肌の上を滑る指の感触が、まだ全身に残っている。
智也さんの気持ちを、信じられないはずがない。
あの心地よさには中毒性がある。今すぐにでも、再び溺れたいと思わせる。

「おいで」

両手を広げた彼を見て戸惑う。

「これからは、君を思い切り甘やかして自覚してもらう。俺が本気で夢子を可愛いと思ってることをな」

動かない私を、彼は引っ張りつけて膝に乗せた。

「ぎゃっ。ちょ、ちょっとこれは」

恥ずかしくてどうにかなりそう。
愛する人と過ごす時間の甘さに、ついていけなくて動揺の嵐だ。

そんな私を背後から抱きしめる腕が温かい。
そっと目を閉じる。





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