恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
しかし、彼の口から出た言葉は……
「…… 姉ちゃんです……」
彼は力無く言った。
「ええ―。うそ―」
私は思わず声を上げてしまい口を手で押さえた。
今まで胸の奥で黒い塊のように動かなかった物がシャボン玉のように弾け、私の心は明らかに軽くなりほっとした。
「こっちが、『ええ―』ですよ…… どうして、声掛けてくれなかったんですか?」
しかし、彼は切なそうに私に訴えた。
「声掛けられる訳ないですよ。情けない修羅場になると思うじゃないですか」
「どうして…… 僕はずっと、ずっと、あなたを探して…… あなたの事ばかり考えていたのに……。会いたかった……」
「海原さん…… 変わってないですね……」
「変わる訳ないじゃないですか…… あなたへの気持ちが変わるなんて……」
「私も会いたかったです……」
「本当ですか?」
「ええ。マフラー、何度も捨てようって思ったけど、寒くなると、いつも手にしてしまうんです。捨てなくて良かった」
「捨てられなくて良かった」
私は彼の口から出た言葉に思わず笑ってしまった。
そう、私はこうして彼と笑いたかったんだ……
懐かしいようで、それでいてあの頃と何も変わらない彼との暖かい空気に私の心も動き出した。
また、彼をかまってみたくなった……
「でも、海原さん、お見合いしようとたんですよね?」
私は少し冷ややかに彼を見た。
「いや、それは無理やり部長に頼まれて…… それに、初めてですから」
彼の焦る姿に、私の胸はキュンとなり、もうちょっといじめてみたくなる。
「その割に、美容院に行ったんじゃないんですか?」
私はチラッと彼の頭を見た。
「そうですけど…… もう、勘弁して下さい」
彼は頭を下げた。
うん…… このぐらいにしておこう……
だって、これからいっぱい、いっぱい彼の困った顔、おどろいた顔が見れそうだから……
いや、見続けてやる! ずっと、ずっと……
「そうですね…… お陰で、又、会えたんですから……」
私は自然とはほほ笑んでしまった。
「本当に……」
彼は私の目をじっと見た。
彼はどんな思いで私の目を見ているのだろう……
「…… 姉ちゃんです……」
彼は力無く言った。
「ええ―。うそ―」
私は思わず声を上げてしまい口を手で押さえた。
今まで胸の奥で黒い塊のように動かなかった物がシャボン玉のように弾け、私の心は明らかに軽くなりほっとした。
「こっちが、『ええ―』ですよ…… どうして、声掛けてくれなかったんですか?」
しかし、彼は切なそうに私に訴えた。
「声掛けられる訳ないですよ。情けない修羅場になると思うじゃないですか」
「どうして…… 僕はずっと、ずっと、あなたを探して…… あなたの事ばかり考えていたのに……。会いたかった……」
「海原さん…… 変わってないですね……」
「変わる訳ないじゃないですか…… あなたへの気持ちが変わるなんて……」
「私も会いたかったです……」
「本当ですか?」
「ええ。マフラー、何度も捨てようって思ったけど、寒くなると、いつも手にしてしまうんです。捨てなくて良かった」
「捨てられなくて良かった」
私は彼の口から出た言葉に思わず笑ってしまった。
そう、私はこうして彼と笑いたかったんだ……
懐かしいようで、それでいてあの頃と何も変わらない彼との暖かい空気に私の心も動き出した。
また、彼をかまってみたくなった……
「でも、海原さん、お見合いしようとたんですよね?」
私は少し冷ややかに彼を見た。
「いや、それは無理やり部長に頼まれて…… それに、初めてですから」
彼の焦る姿に、私の胸はキュンとなり、もうちょっといじめてみたくなる。
「その割に、美容院に行ったんじゃないんですか?」
私はチラッと彼の頭を見た。
「そうですけど…… もう、勘弁して下さい」
彼は頭を下げた。
うん…… このぐらいにしておこう……
だって、これからいっぱい、いっぱい彼の困った顔、おどろいた顔が見れそうだから……
いや、見続けてやる! ずっと、ずっと……
「そうですね…… お陰で、又、会えたんですから……」
私は自然とはほほ笑んでしまった。
「本当に……」
彼は私の目をじっと見た。
彼はどんな思いで私の目を見ているのだろう……