朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
「やめた方がいい。エドガーも許すはずない」
「どうして。仲直りしたはずでしょ?」
「そんなことを言っているんじゃない。今から俺が行くのは、戦争による孤児と貧困で溢れたものすごく治安の悪い街だ。そんなところにあんたが行ったら、何されるかわからないぞ」
それは……私が元敵国の王女だったから、逆恨みされて襲われるかもしれないってことね。
「……そっか」
今ならラッセルの気持ちが少しわかるかも。どれだけ頑張っても、アミルカ出身である限り、認めてもらえないんだわ。
「おいおい、なにズーンと沈んでるんだよ」
「大丈夫よ……」
「そう言いながら壁に渦巻き書いてるじゃないか」
いじいじと指で壁に渦巻きを書いていると、ラッセルに心配された。さすがの私だってくじけるわよ。
「大変なのはわかっててエドガーと結婚したんだろ。シャキッとしろ、シャキッと。間違ったことをしていないなら、胸を張れ」
ちょっと乱暴に背中を叩かれる。そうよね。賄賂目当てで知り合いの旦那様を要職につけるように推薦するなんて、やっちゃいけないことよ。私は間違ってない。エドガーだってそんなの絶対に認めないはず。
なよなよしてるからなめられるんだ。ラッセルの言う通り、胸を張っていよう。
「なかなかいいこと言うわね。さすが私の弟」
ラッセルの方が年上だけどね。
「アホ。姉貴面すんな」
また照れたような顔をして、ラッセルは行ってしまった。私はもう一度『頑張れ』と遠ざかる背中に心の中で声をかけた。