偽りのフィアンセ
──四年前。
金持ちのお嬢様達が多く通う中学校の紺色のセーラー服を身に纏い、その少女は現れた。
まだあどけなさの残る少女の冷めた視線。その視線の先の父と……見知らぬ派手な女。
弟と同じ年頃に見える少女は、真っ直ぐにそこへ向かって行った。その後を、少し遅れてカナメさんが追っている。
それを見て、少女がカナメさんの娘であることに気づいた。
以前、明日香(アスカ)さんが嬉しそうに少女のことを語っていた姿を思い出す。
病弱で殆ど家から出ることのなかったあの人に、毎日のように会いに来ていたらしい少女のことを、あの人は満面の笑みで、とても楽しそうに俺に話してくれた。
本家に滅多に足を踏み入れることのない俺は、たまに会うあの人が楽し気に語ってくれる少女の話が好きだった。
あの人をあんなにも笑顔にしてくれた少女に、きっと孤独に苦しんでいたあの人の、一日の内の例え数時間でも、数十分でも、傍にいてくれた少女に感謝していたが……それと同時に、自分がやりたくても出来なかったことをしていた少女に、俺は……嫉妬にも似た感情を抱いていた。