偽りのフィアンセ
──四年前のあの日以来、あの少女と会うことはなかった。ただ、父の会社の関係者からたまに聞こえてくる「カナメさんのお嬢さん」という言葉と、先程のカナメさんの様子からして、どうやらカナメさんの溺愛ぶりは相変わらずのようだ。
そして……。
「何だ、ジン。ノックくらいしろ」
俺が乱暴にドアを開けてすぐに、真正面の大きなデスクの上にアダルト誌を広げて真剣に見入っていた父が、目も上げずに俺の名を呼んだ。まるで俺が来ることがわかっていたかのように。
いや……きっとわかっていたのだろう。
「どうゆうつもりですか」
俺の静かな問いかけに、父がようやくこちらに目を向けた。
「どうって?」
口元に嫌な笑みを浮かべて本を閉じる。
大股でデスクまで歩み寄った俺は、そこへ叩きつけるように一冊の雑誌を置いた。
「この週刊誌に嘘の情報を売ったのは貴方でしょう?」
あるページを開いて、父に見せる。そこには丸々二ページを使い俺の写真と、ある女性モデルの写真。そして、その写真と共に大きな文字で《熱愛発覚!ゴールインも目前か!?》そう書かれていた。