エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 源は油断していた。

 無事に屋敷を抜け出せた事と、目の前で子を思う母の強さを見せつけられて、やはり自分も高飛びする前に、家族に会っておかなければ…という気持ちになっていた。

 すると遥か前方にテレビ局の車に乗り込もうとしている望たちの姿が見えたのだ。

 源は望にお礼がいいたい。

 そして望の強さを讃えたかった。

 出来れば火菜の事も話しておきたいと、走りだそうとした時にいきなり後頭部に激痛が走った。

(ああ、後少しだったのに…)

 源の強い意志とはウラハラに体は崩れ落ちて行った。
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