エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「ケータイだ!ケータイに掛けてみよう。もしかして、無事なら繋がるかもしれない。」

 源は、急いで勇のケータイに掛けてみたが、無情にもケータイは、

「現在、電源を切っておられるか、電波の届かない所にいらっしゃいます。」

を繰り返すだけだった。

 どうやら捕まって、ケータイさえも没収されている危機にはないようだが、二人はがっかりした。

「ていうか、おっちゃん勇のケータイは電源が入ってないんじゃないの?」

 源は記憶を辿っていった。

 確かにケータイを二人に渡して使い方の説明をしようとした時に、弥生の叫び声が聞こえた。

「ああ、なんて事だ。電源を入れて渡すんだった。」

 源は悔やんだが、今となってはどうしようもない。

「でも、これだけは言えるが、ケータイはまだ生きているのは確かだ。もしかして壊されているなら、メッセージは『現在、使われておりません。』と言うハズだ。」

 火菜は勇が、まだ無事でいると分かったようで少しホッとした。

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