未知の世界5
「はい。吸ってー、吐いてー。」
一体だれが主治医なのかいつも分からないけど、大抵石川先生が心臓、進藤先生が喘息を担当してくれる。
聴診は普段からそばにいてくれる石川先生が多い。
もちろん家では幸治さんも。
だけど、ここ最近、忙しさよりも前の生活に戻りつつある状態に、お互い油断していたのか、と言っても私は今までと変わらず幸治さんに体調について言う訳でもなく、幸治さんも前の生活に戻りつつあるから特に私に注意する訳でもなくことが進んでいた。
ここ数日で寒さが増したことから、感冒、いわゆる風邪を引く患者が増えていた。
同じように、風邪ではないが、私の体調にも何らかの異変があったのか。
でも、食欲落ちたことくらいしか。
あ、今朝の咳……くらいしか、異変はない。
石川先生が胸から聴診器を外す。
ようやく終わったか。
と思うと、神妙な面持ちで、
「特に何も異常はないな。」
それならその顔は一体…。
「ちょっと様子見ですかね。
それから健診が月に一回となっているけど、まぁ、今週金曜日にやった方が良さそうだな。」
え!?早っ!先々週したばなりなのに。
『うちも同じ日にやろう。ねっ?』
ねっ?って言うより、なっ!と言った方が正しいと思う。
質問ではなく決定事項なのだから。
「はい、ありがとうございました。」
そう言い席を立とうとしたところ、
『危ないっ!』
部屋がぐらっと揺らいだかと思ったら、目の前にいる石川先生に向かって倒れ込んでいた。
「おい、大丈夫か?」
反射神経抜群の石川先生が、私を支える。
「急に立つからだぞ。」
そう言われ、自分で貧血の症状が出てることはわかった。
それと同時に、
ヤバっ!
と身体中に変な汗をかく。
そう、貧血の薬は、自分の自覚症状で飲むことなになっていて、前回の健診ではヘモグロビンの数値が少し下がっていたので、薬を飲まないといけなかったのだ。
チラッと幸治さんの顔を見ると、
だから言っただろ?
って顔をしている。
なぜなら、前回健診での血液検査の結果の数値が出た時に、幸治さんに飲んだ方がいいんじゃないかって、言われていたから…。