未知の世界5

りさちゃんの病室を出て医局へ戻る。








『どうだった?』








隣の席の石川先生に声をかけられる。









「うーん…、頑なに帰ろうとしてましたけど、最後は落ち着いてベッドに横になってくれました。







喘息の症状は、結構ひどいです。」






石川先生に検査結果を見せる。








『親御さんはなんて?』









「養護施設の子なので親御さんはいませんが、施設の方は全く気づかなかったようです。」









と話すと、反対側の席の早川先生がこちらを見た気がした。










『そうか。明日からも様子見て、だな。』









「はい、ありがとうございます。」








私の患者を気にしてくれる石川先生にお礼を言い、検査結果を受け取った。










その後石川先生は回診に向かうため席を立った。













『かなちゃん、かなちゃん。』








と、医局長に呼ばれ、医局長の席の前へ。








『何?今度の担当の子は、養護施設の子なの?』








「はい。」











『大丈夫?担当代わる?』








医局長は、私の過去を知ってるから、気を遣ってくれているんだ。







「いえ、もう大丈夫です。ありがとうございます。」








『うん、分かったよ。でも、辛くなったら言ってよ。』








医局長の心遣いには本当にいつも頭が上がらない。もう一度お礼を言い、自分の席に戻った。








反対側の早川先生も私を見ている。








私は大丈夫です、という気持ちを込めて、愛想笑いをしてみた。








席に座る途中、背中に痛みが軽く走ったけど、すぐに止む。









何だったんだろ…。






そんな疑問は深く考えず、残りの書類に取り掛かる。








< 182 / 393 >

この作品をシェア

pagetop