未知の世界5
りさちゃんの病室を出て医局へ戻る。
『どうだった?』
隣の席の石川先生に声をかけられる。
「うーん…、頑なに帰ろうとしてましたけど、最後は落ち着いてベッドに横になってくれました。
喘息の症状は、結構ひどいです。」
石川先生に検査結果を見せる。
『親御さんはなんて?』
「養護施設の子なので親御さんはいませんが、施設の方は全く気づかなかったようです。」
と話すと、反対側の席の早川先生がこちらを見た気がした。
『そうか。明日からも様子見て、だな。』
「はい、ありがとうございます。」
私の患者を気にしてくれる石川先生にお礼を言い、検査結果を受け取った。
その後石川先生は回診に向かうため席を立った。
『かなちゃん、かなちゃん。』
と、医局長に呼ばれ、医局長の席の前へ。
『何?今度の担当の子は、養護施設の子なの?』
「はい。」
『大丈夫?担当代わる?』
医局長は、私の過去を知ってるから、気を遣ってくれているんだ。
「いえ、もう大丈夫です。ありがとうございます。」
『うん、分かったよ。でも、辛くなったら言ってよ。』
医局長の心遣いには本当にいつも頭が上がらない。もう一度お礼を言い、自分の席に戻った。
反対側の早川先生も私を見ている。
私は大丈夫です、という気持ちを込めて、愛想笑いをしてみた。
席に座る途中、背中に痛みが軽く走ったけど、すぐに止む。
何だったんだろ…。
そんな疑問は深く考えず、残りの書類に取り掛かる。